デザイン会社の営業

今、参加している会社では、僕の肩書は研究開発担当ディレクターとなっている。その主な仕事は、技術や技法の開発、案件に関連した調査は当然として、新規顧客との初期段階での打ち合わせや提案の基本構想を検討することなどが含まれている。前半は肩書と直結しているが、後半は、いわゆる営業と言っても違和感はないものだろう。実際、僕の仕事の大部分は顧客との打ち合わせや顧客に対しての提案の類を作るための作業になっている。

そもそも、デザイン会社の営みというを分解してみると、マスプロダクトのデザイン以外の仕事は、個々に異った顧客のニーズや好み、制約条件に対して、適切なデザインの成果物を提供するという作業である。無論それ以外のことも数多くある。しかし基本は、顧客の要求に対して答えるということだろう。

この営みが正しく遂行されるためには、顧客の要求と、顧客自体への理解が必須となる。顧客の要求であれば、的を得ているか、それはどのような構成要素になっているのか、必須の要件はなにかなど、膨大な視点から検討されなければいけない。また顧客についてであれば、その事業のおかれている状況や状態、価値観や信念、企業の目標、担当者の状況など、これらもまた膨大な視点から理解をすることが必要となる。

この両方ができて、ようやく何をどうデザインするのかが明確になる。それは、実現するための方法やテクノロジーが選択できる状態になるということでもある。もしそのとき選択の対象になるものがなければ、それは開発しなければいけないものなのだ。そして、大半のケースにおいて、デザインは何らかの開発が必要になる。

つまりは、デザインという営みは、研究開発とほとんど同じようなものと言えるのではないだろうか。

もちろん、違う点もある。特に違うのは、研究開発には顧客がいないケースもあるということ、また、その成果物が長期的に効果を上げることが想定されていることが多い。また、その成果物は、繰り返し利用され、利益を生み出し続けるようなものが想定されてもいる。デザインの場合は、成果物の有効性は、その顧客に対してのみ、ということがほとんどになる。課題を解決を解決するためにテクノロジーを開発した場合でも、第一にはその課題の解決があり、それが満されなければいけない。開発の成果物が繰り返し利用され、利益を生み出しつづけるようにするには、そのための追加の開発が必要となる。顧客側の課題が全てを駆動する基本となるのだ。

そして、この顧客の要求と顧客を理解し、何をするのかを明確にする仕事がデザイン会社における営業の取り組みになる。それは直接的に制作のコストにかかわってくるからだ。つまり、デザイン会社の営業というのは、実質的には研究開発のディレクションだと言えるだろう。