wikimediaへの提案

Wikimedia財団が新しい取り組みの提案や新たなボランティアシップの募集をしている。

wikipediaのタイトルバナーに各国語に翻訳されたそれが表示されているそれはおそらく世界で最も多く読まれているボランティア募集の広告だろう。WHOやWWFなんて目じゃない。

ここではその広告効果を分析することもできるのだが、そういう無粋なことはここではやめて、何か提案をしてみようと思う。

もし気に入った人がいて、殊勝にも翻訳してくれるならば、出典さえ明記してくれれば自由にしてくれてかまわない。(wikipediaの流儀にしたがうならば、”無保証”だからだ。)

提案:辞書からアーカイブ、そして、ポストプロダクションジャーナルへ

僕が提案したいことは、wikipediaを辞書を作る運動から、知をアーカイブし編纂する社会プラットフォームへと展開させることだ。

すでに、wikipediaは辞書として精度はさておくとして、十分な役割を果しつつある。しかし、そこにある情報は二次情報、つまり何らかの原典をもち、そこに正当性を担保させたものだ。この方法のメリットは、wikipedia上の情報が不正確であったとしても、その責任を原典に帰結させることを可能とする。原典に対する解釈論的な問題は残るものの、原典に当るべきである旨が明記されている限りにおいて、wikipediaとその書き手は例え不正確な記述であったとしても無責任であることが保証される。

僕の提案は、この今の原典引用主義から一歩踏み込むものだ。

全ての人とは言わないが少なくとも研究者や学者が、自説や研究をwikipedia(と呼ぶものかどうかはすでに不明だが)上でそれぞれの責任で最新の成果を執筆し、それを編集者が編集し、公開後に査読する。不備があれば査読者が修正すれば良い。妥当でないならば、議論すれば良い。その結果、継続的に行われている研究であれば知見が蓄積されることだろう。一発ネタ的な研究であったとしてもそれを引き継ぐ人が表れるかもしれないだろう。

またwikipedia的なものを利用することのメリットは他にもある。研究ノートとしての正当性の保証を外部に預託できることである。wikipediaの記事にはタイムスタンプがある。これは研究ノートのプラットフォームとしては重要なことで、アイデアが文字として定着された日時を管理することが可能となる。

問題は、特許制度との整合性だろう。おそらくwikipedia上で公開された新しい知見や研究開発の成果は、特許法における「公知」になる。日本においてはこれら極めて重大な問題である。しかし、これも公開の範囲や時期を設定できるようにしたりすれば回避は可能だろう。理想的には、wikipediaが特許法30条適用になれば良いのだが、それは相当先の話だろう。