スパコン開発は宮大工と同じ
数日前、理研の進める汎用京速計算機の開発から、NECが離脱する旨の報道があった。
複数のソースをまとめると、NECの離脱は、計算機(クラスタ)の使用する計算機のうちベクトル型コンピュータの詳細設計が完了したタイミングで、離脱の趣旨は、実際の製造の段階での100億円程度の負担が、昨今の景況から難しいという判断をしたもののようだ。
100億円くらいならば、政府が負担するように調整するべきだったのではないか、というのが率直な感想だ。
いわゆるスパコンは、我々の生活にはそれほど大きな意味を持つようには見えない。しかし、それが不要であるという結論にはつながらない。なぜならば、我々の社会インフラのかなりの部分はスパコンによって支えられているからだ。
その部分を完全に国外の企業に押えられてしまったら、日本の社会インフラはどうなるのか、長期的な視点で考えてみてもらいたい。
スパコンを開発するには広範な科学技術が必要となる。また、多岐に及ぶノウハウも必要となる。ノウハウは研究開発、製造、運用などのあらゆる段階に存在する。特にノウハウは、作る過程でしか次世代に伝えることはできない。宮大工の技術のようなものなのだ。
また、特に、最新のコンピュータを作る技術は日進月歩だ。そこの追従しつづけるためにはプレーヤとして競争に参加しつづけるしかない。今回のNECの離脱は直接この競争からの離脱を意味するものではない。しかし、実際に製造し、それが動作するとを確認し、次の開発への知見を固める一連の手続きが完了されないことは、新なノウハウの獲得という点でもマイナスだし、次世代を育成する上でもマイナスだと思う。
このノウハウに知財性が含まれている(そして技術転用でもうけられるだろう)から、100億円は自腹を切らせようと政府は目算したのだろうが、もはや景況はそういうことを言えるような状況でなはない。
政府、関係機関、全てに再検討をしてもらいたい。
なお、僕はSUNはきらいではなく、むしろ大好きなのだが、今回に限り、国産ガンバレという立場でありたいと思う。