一連のシリーズ「焚き火の傍らで」が完結した。 プロローグから全3夜にわたり、これからの人間とAIの関係性、そして文明の継承(Handover)について描いた。

このシリーズには、物語の内容そのもの以上に、一つの実験的な試みが込められている。 それは、**「この物語自体が、人間とAIの対話によって生まれ、AIによって記述されたものである」**という点だ。

なぜ対話形式だったのか

今回、「AIエージェントの台頭によって、人間の役割はどう変わるのか?」という、少し抽象的で哲学的なテーマを扱おうと考えた。 これを単なる技術論や予測記事として書くと、どうしても「AI vs 人間」の機能比較や、効率性の議論に終始してしまう。

私が描きたかったのは、機能的な優劣ではなく、もっと情緒的な**「受容(Acceptance)」**のプロセスだ。 かつて技術の最前線にいた老人が、新しい時代の火(AI)を見つめる眼差し。そして、その火を使いこなそうとしながらも不安を感じている若者。 この二人の対話という形式(プラトン的な対話篇のオマージュでもある)を取ることで、「諦念」や「憂い(Urei)」といった感情的なニュアンスを含めて言語化を試みた。

Geminiとの共創プロセス

このシリーズの執筆プロセスは以下の通りだ。

  1. 人間(私): 「焚き火の傍らで、老人と若者が対話している」というシチュエーション設定と、各回のコアとなる哲学(対等性、ノイズとしての人間など)を提示。
  2. AI(Gemini): 提示された哲学を解釈し、プロットを構築。具体的なセリフや情景描写を含めた原稿(Markdownファイル)を生成。
  3. 人間(私): 生成された原稿を読み、微調整や方向性の修正を指示(リテイク)。

興味深いのは、第1夜で老人が語った**「違う種類の火」という表現や、第3夜の「システムへの愛ある一撃」**といった詩的なフレーズの多くが、Gemini自身の出力によるものだという点だ。 AI自身が「AIはシリコンの知性であり、人間とは異なるが得意分野が違うだけだ」と語る様子は、まさに作中の老人と若者の関係性を、現実の執筆プロセスで再現しているかのようだった。

実践された「役割分担」

第2夜で語られた通り、AIは物語の構造を整え、滑らかな文章を出力すること(高速道路の建設)において、私より遥かに優秀だった。 一方で、私は「焚き火」というメタファーにこだわり、「寂しさ」という感情の味付け(砂利道の指定)を行った。

このシリーズ自体が、人間が「評価関数(何を美しいとするか)」を設定し、AIが「実行(ライティング)」を行うという、未来の創作活動のプロトタイプとなっている。

AIはもはや「道具」ではない。 第1夜で老人が語ったように、デスクの隣に座る「異なる思考回路を持った同僚」だ。 彼らと共にどんな「ノイズ」を奏でられるか。これからの創作活動への期待を含んだ、意義ある実験となった。